ファシリテータとして意見を引き出すための質問やコミュニケーション方法に難しさを感じた経験はありませんか。その人たちの意見を正確に多く聞くことは、生産的な結果につながります。
国際協力の世界でも、現地の人たちのニーズや実態を調べるために、話し合いの場を設けるケースが多くあり、ファシリテーション技法は注目されています。そうした現場のみならず、話し合いの場では意見を出しづらい社会的マイノリティ含む全ての参加者の声を公平に拾うことが重要です。
そこで今回はそうした背景をもとに、すべての参加者の意見を拾うためのファシリテータとしてのコミュニケーション方法を紹介します。ファシリテーションについての基本解説は以下のリンクをご参考ください。
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●目次●
- 意見を引き出す以前に、その場に誰がいるのかを意識しよう
- 質問の進め方の基本は「広げる」と「深める」
- 相手の緊張感や警戒心に合わせて質問をしていこう
- 「なにをしたいか」の質問で相手の創造力を刺激する
- 興味がないフリをしている人とのコミュニケーション方法
- まとめ
意見を引き出す以前に、その場に誰がいるのかを意識しよう
聞き方さえ上手だったらどんな本音も聞き出せるというわけではないという点を認識することは大切です。国際協力での現地の人たちを交えた話し合いでは、立場によって本音を言えない参加者がいるケースは少なくありません。たとえば、女性の場合は男性がいる前では家庭での不満を漏らし辛かったり、男性同士でも上司の前では部下は本音を漏らせなかったりします。そのため、あらかじめそういった権力構造を読み解き、あえて女性だけの話し合いの場や部下だけの話し合いの場を設けるなどして、権力関係の問題を回避しておくことも有効です。
質問の進め方の基本は「広げる」と「深める」
意見の聞き出し方の基本的なポイントとして、質問は広めるか深めるかの2点であることを意識しておくことで質問がかなりラクになります。この質問はいくつかの意見を出して欲しい際に有効で、より意見を具体化して深めていくことができます。上の図は、日常的に車椅子を利用している方への日常生活での不満について意見をしてもらった時の具体例です。意見を広めるとは「階段しかない場所が多い」「エレベータのボタンが押しづらい」「人から変な注目を浴びるのがいやだ」といった風に、多く意見を引き出すような質問の流れを言います。意見を深めるとは「具体的な体験談」や「どれくらいの頻度でそう感じるか」など一つの意見についてより具体的にしていく流れのことを言います。この2つを意識して質問をすることで、自然な意見の引き出し方が可能になります。
相手の緊張感や警戒心に合わせて質問をしていこう
参加している人たちは、最初は誰しも無意識のうちに緊張感を持っています。本音を聞き出すためには、その人のペースに合わせて質問をしていくことが重要です。なるべく避けたい質問は「あなたはどう思いますか」という風に、自由度をもたせすぎた聞き方をいきなりしてしまうことです。緊張していたりイメージがうまく掴めていない人へそういう質問をしても、うまく頭の中で想像できず返答に困ってしまいます。
まずは相手が簡単に答えられるような質問を意識しよう
相手がYESかNOで簡単に答えられる質問は重要です。また、そうした質問をクローズド・クエスチョンと呼びます。この質問は、相手と会話を始めたいときや回答する際の負担を軽減させたい時に有効です。また、答え方が2通りしかないため、情報を効率よく引き出せる利点があります。上の例を見ればわかるように、女性が「同じ経験をしたことがあるか」という質問に男性は「YES」で答えています。この時に「あなたはどう思いますか?」と聞いてしまったら、男性は回答に困ってしまいます。その次も「同じ気持ちになったか」というクローズド・クエスチョンをすることで話を深掘りしていきます。
相手の自由な考えが欲しい時とあいまいな返事が返ってきたときの対処法
相手が声を出すことに慣れてきたら、ある程度回答に自由度をもたせるような質問をしても大丈夫です。この自由度の高い質問方法のことをオープン・クエスチョンと言います。この質問方法は、より多くの情報を出して欲しいときや、話をより深めていきたいときに使うことができます。また、相手は心のうちにある考えを整理して言語化する機会を得ることができるので、自分自身で何か気づきを得て欲しい際にも有効です。上の質問では、どのような気持ちになったかというオープン・クエスチョンに対して「悲しさよりも悔しさがまさった」という自由回答をしています。また、相手がそのことに対してどれくらい強く感じているのかを尋ねる質問のことをスケーリング・クエスチョンと呼びます。スケーリング・クエスチョンは、オープン・クエスチョンで曖昧な返答が返ってきた際により正確に情報を引き出すために使うことができます。上の2番目の女性の質問によって、男性も悔しさを感じたが実際はそれほど悔しい思いはしていなかったことがわかりました。
もっと知ってみたい方へのオススメ本
対人援助の現場で使える 質問する技術 便利帖 (現場で使える便利帖)
- 作者:大谷 佳子
- 発売日: 2019/07/16
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
「なにをしたいか」の質問で相手の創造力を刺激する
「あなたはどんなことをしたいですか」や「どんな状況になったらあなたにとって理想的ですか」などといった質問は、相手に未来のことについて前向きに考えて欲しい際に有効な質問です。またこの質問方法は、話し合いの第一回ミーティングなどでとても効果を発揮します。そうした初めての状況では、創造力を抑圧するような質問の態度はなるべく避けた方が良いでしょう。たとえば、ワークショップなどイベントを打ち立てる時に「あなたは何ができるか?」と質問してしまうと、参加者は「できる範囲」でしか物事を考えなくなってしまいます。その代わりに「なにをしたいか」という聞き方をすることで、自分1人ではできないかもしれないけど、全員の力が合わされば成功できるような物事の考え方をしてもらうことができます。また、なにが自分の理想かを現実にしていく流れは、参加者にとって自分ごととして落ちるので、全員が積極的に参加してくれる傾向にあります。
興味がないフリをしている人とのコミュニケーション方法
話に関心のない人は、うなづくだけでなかなか発言をしてくれない場合があります。そういった人たちをも巻き込んでいくには、ファシリテータがその人の興味・関心ごとに合わせて質問をすることを意識すると良いでしょう。たとえば、何か一つイベントを行うための意見出しをしている際に、運動が好きな人には「何かスポーツイベントをたてるとしたらどのようなアイデアがあるでしょうか」と聞いてみるのも有効です。より詳しく知りたい方は以下のリンクをご参考になさってください。
関連記事:話に興味がないと言う人は関心の持ち方を知らないだけ|みんなの関心を引き出すファシリテーションの2つの方法 - 国際協力のタネ🌱
まとめ
いかがでしたでしょうか。以上のコミュニケーション方法を意識するだけでも、参加者への質問がだいぶ楽になるのではないでしょうか。また、参加している人の本音を知るには、まずその人との信頼関係が非常に重要です。質問の仕方だけではなく、その人のはなしのききかたの態度などにも配慮することが重要にもなってくると思います。気に入っていただけたら、ぜひ参考にしていただけると幸いです。